はじめに
「少し歩くと足がしびれてくる」「休むと楽になるけれど、また歩き始めると同じ症状が出てしまう」
このようなお悩みはありませんか?
これらは、脊柱管狭窄症に多くみられる代表的な症状です。
脊柱管狭窄症は高齢の方に多いことから、「もう年だから仕方ない」「我慢して付き合っていくしかない」と考え、つらさを抱えたまま日常生活を送っている方も少なくありません。
しかし実際には、姿勢や体の使い方、使うべき筋肉などを見直すことで、症状が軽減し、「日常生活が楽になった」「以前より歩けるようになった」などというケースも多くあります。
今回は、理学療法士の視点と、これまで多くのお身体を見てきた経験をもとに、脊柱管狭窄症の特徴や悪化しやすい生活習慣、そしてご自宅でできる予防・改善方法について、分かりやすく解説していきます。
脊柱管狭窄症とは?
私たちの背骨の中には、「脊柱管(せきちゅうかん)」と呼ばれる神経の通り道があります。
この脊柱管の中を、脳から足へ向かう大切な神経が通っています。
加齢による骨や靭帯の変化、椎間板の変性、長年の姿勢の崩れなどが重なることで、この脊柱管が狭くなってしまう状態を脊柱管狭窄症といいます。
脊柱管が狭くなると、中を通る神経が圧迫され、
①脚のしびれ
②腰や脚の痛み
③歩行障害(間欠性跛行)
といった症状が現れやすくなります。
特に腰の脊柱管狭窄症では、長時間立ったり歩いたりすることで症状が悪化しやすいのが特徴です。
よくある症状とその特徴
● 間欠性跛行(かんけつせいはこう)
しばらく歩くと脚がしびれたり痛くなり、少し休むとまた歩けるようになる症状です。
「最初は500m歩けていたのに、だんだん距離が短くなってきた」という声もよく聞かれます。
● 前かがみになると楽になる
前かがみの姿勢になると、神経への圧迫が一時的に和らぐため、症状が軽減します。
そのため、「買い物カートやシルバーカーを押していると楽」「自転車なら長くこげる」という方も多くいらっしゃいます。
● 足の冷え・力が入りにくい・つまずきやすい
神経の働きが低下することで、筋力がうまく発揮できなかったり、感覚が鈍くなったりします。
これにより、段差でつまずきやすくなったり、歩くこと自体に不安を感じるようになることもあります。
脊柱管狭窄症を悪化させやすい生活習慣
① 猫背や反り腰などの姿勢の乱れ
背骨は本来、緩やかなS字カーブを描いています。
しかし、猫背や反り腰などの姿勢が続くと、腰のカーブが強くなりすぎたり、逆に丸くなりすぎたりして、脊柱管への負担が増加します。
特に反り腰の方は、腰を反らす動作で神経の圧迫が強まりやすいため要注意。
② 長時間の立ち仕事や歩行
悪い姿勢のまま長時間立ったり歩いたりすると、腰への負担が蓄積し、症状が出やすくなります。
違和感を感じたまま放置していると、結果的に症状の悪化につながることもあります。
③ 体幹(インナーマッスル)の筋力低下
腹横筋などのインナーマッスルは、背骨や骨盤を安定させる重要な役割を担っています。
これらの筋肉がうまく使えていないと、腰椎に余計な負担がかかり、脊柱管狭窄症の症状を悪化させてしまいます。
今日からできる予防・改善方法
① 股関節のストレッチ

・片脚を曲げ、反対側の脚をできる範囲で後ろに伸ばします
・後ろ脚の付け根が心地よく伸びるのを感じながら30秒キープ
※痛みが出ない範囲で、呼吸を止めずに行いましょう
② 背中・腰のストレッチ

・仰向けになり、両膝を胸に引き寄せます
・腰や背中がじんわり伸びるのを感じながら30秒キープ
③ 腹横筋トレーニング(ドローイン)
・仰向けになり、膝を立ててリラックス
・5秒かけて息を吸い、お腹を膨らませる
・5秒かけて息を吐き、お腹をへこませる
・10回を目安に行いましょう
まとめ:脊柱管狭窄症は「年のせい」だけではありません
脊柱管狭窄症は、加齢が関係することは事実ですが、それだけが原因ではありません。
姿勢、体の使い方、筋肉の働きを見直すことで、症状の進行を防ぎ、生活の質を高めることが可能です。
大切なのは、「今のお身体がどういう状態なのか」「なぜ症状が出ているのか」を正しく知ることです。
当院では、お一人お一人のお悩みに丁寧に耳を傾け、分かりやすい説明と無理のない施術を大切にしています。
「このまま歩けなくなったらどうしよう…」と不安を感じている方は、どうぞ一人で悩まずにご相談ください。








